読書録゛ ‐ どくしょログ

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書評: インシテミル

 閉鎖空間で行われるサバイバルゲーム小説。

インシテミル (文春文庫)

インシテミル (文春文庫)

 

限られたリソースや空間内で行われる出来事やゲームを舞台にした小説は好きな方である。これもはじめの方はかなり期待が持てた。設定舞台や条件などは申し分なく、期待に沿うものであった。はじめのワクワク感はかなりいいものがある。

惜しむらくは後半だ。まず殺されるペースが早すぎるのだ。一気にどんどん死んでいくため、恐怖心を煽るための文量が少ないのではないだろうか。とっとと人が減っていくので、ドロドロしているはずの物語がいやにあっさりしているのだ。そのあっさり感のままラストに突入するので、メインの殺人犯の意味も霞んでしまう。ヒロインにももっとダークな感じの存在感がほしいところだ。

とはいえ、はじめにも書いたが導入部分の空間設定は申し分ない。さらに続きを読ませたくなるものは確かにこの小説にはある。難しい表現やわかりにくいトリックはないので、電車内での読書や暇をつぶしには、サラリと読めるもってこいの小説だと思う。