読書録゛ ‐ どくしょログ

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書評: 造物主(ライフメーカー)の掟

ジェイムズ・P・ホーガンの著書では、ほかに「星を継ぐもの」のシリーズを以前に読んだことがある。 

造物主(ライフメーカー)の掟 (創元SF文庫 (663-7))

造物主(ライフメーカー)の掟 (創元SF文庫 (663-7))

 

 

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 

「星を継ぐもの」 の衝撃は凄かった。赤いスーツの「人」は一体何者なのかという謎から始まるこのシリーズは、先を読みたくて、夜も寝られなかった。SF小説の傑作とはこういうものなのかと心底楽しめた本である。

それに比べ「造物主(ライフメーカー)の掟」は、また同じ感動が味わえるのかと、期待が大きかっただけに、拍子抜けしてしまった。本の前半は、主人公の詐欺師がどういう詐欺をしているのかにページが割かれすぎているように思える。いつドラマが始まるのかと期待しながら読み進めて、そのまま山場がなく終わってしまった感じがする。「丘」ぐらいの盛り上がりは当然あるが、ドキドキしながら読み進めた期待感には最後まで応えてくれることはなかった。

「宇宙人」に相当するタロイドたちも面白いが、やはり個性にパンチがない。ヨーロッパ中世にいたであろう、ステレオタイプな人物像をモデルにしているが、それ以上の域は出ない。また、地球人側から呼ばれる呼び名とタロイドたちの間で語られる呼び名があるので、どの人物を示しているのか慣れるまでに時間がかかる。しばらく読むのを中断してしまうと、筆者の拙い記憶は断片化し、誰がどの人物か忘れてしまった。キャッチアップするのに少し前から再度読むので時間を要してしまう。

否定的な書評ばかり書いてしまったが、知的生命とは何かを考えるにあたって、なかなか考えさせられる内容もある。人間は劣っている種族であれば「リソース」としか考えないところなど、「安価」な外国人労働者を入れようとしている、どこかの国の政治家を彷彿とさせる場面もある。

SF作品は人の歩んできた過去の経験や歴史から、未来への行動を勧告する一面もあると思う。その意味においては「造物主(ライフメーカー)の掟」は十分にその役割を果たしている作品だ。惜しむらくは、もう少し意外性とエンターテイメント性が欲しかった。

もっとも、今は2014年である。「2001年宇宙の旅」よりもだいぶ未来になってしまった。SF作品は小説や映画でも数多く出版された後であり、SFネタを目にすることも1985年に比べたらはるかに多いだろう。この本に意外性が低いのはある意味当然であり、1985年ごろに読んでいたら、感想も大きく変わったかもしれない。もっとほかのSF作品が登場する前に読むべき本であった。