読書録゛ ‐ どくしょログ

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書評: Another

続けて書評。

Another(上) (角川文庫)

Another(上) (角川文庫)

 

  

Another(下) (角川文庫)

Another(下) (角川文庫)

 

ホラーとミステリーのさじ加減が抜群の本である。前半はヒロインの妖しさに魅了され、後半はクラス三年三組の謎に迫って行く。 

いくつかのオカルト的な要素の謎は最後になっても残る。事件解決型の小説を読みたい人にはお勧めできないが、それでも充分補えるだけの内容は保証できよう。何より物事の描写が恐怖を引き立てる。

読んでいて思い出したのが、ドッペルゲンガーだ。正確にはドッペルゲンガーとは違うようだが、「死者」の位置づけは似ているように思える。記憶の改ざんや過去から蘇ってくるアイディアは他から取り入れたのだろうが、これがまた謎に深みをもたらす。「死者」がどうして出てくるのかまで迫ってほしかったが、それをバラしては恐怖が薄れてしまうのだろう。

こうした非日常的な恐怖の物語にどっぷり浸かって、日常を忘れるのも決して悪くはない。アニメ版や映画も作られたらしいので、そちらにも興味はある。ただ、原作と大きく内容が異なる場合や、雰囲気が大きく違っているとせっかくの恐怖幻想が台無しにされるのでそこが心配ではある。ドラマや映画業界もネタが尽きてきたのか、漫画や小説からリメークしたものが最近の流行りのようであるが、原作レイプで終わったものも少なくないと思う。やはり、原作は原作のままで保つべきなのか、評価は別れるところだろう。